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教育基本条例とハシズムの危険

市議会の傍聴に行ってきた

24 Mar 2012 最近の動静を追記(初出: 8 Dec 2011)

ハシズムの蔓延

橋下徹氏が提唱し大阪維新の会が提案する「教育基本条例」案、 これを一読すれば「ハシズム」がなんであるかがよく分かる。 2011年4月の統一地方選挙と11月の大阪市、大阪府での大阪維新の会の躍進、勝利を背景に 「教育基本条例」、「職員基本条例」などが押し進められようとしている。 これを許すとたいへんなことになるということで、 産まれて初めての経験。これが審議される12月8日堺市議会文教委員会の傍聴に行ってきた。

堺市議会の情勢

大阪府だけでなく、府下の政令指定都市である大阪市と堺市にも同様の条例案が提出され、審議されている(大阪市議会ではすでに9月30日に否決)。 ここで議会勢力について説明しておく。 大阪府議会で維新の会は過半数を制するが、大阪市、堺市とも維新の会は第1会派だが、単独過半数とはなっていない。 堺市議会の場合、維新 13、公明 12、共産 8、自民 7、民主 5、無所属 7。過半数は 26で、 いまのところ維新以外の全会派が「教育基本条例」案に反対しているので、そのままでは通りそうもない。 しかし公明が手を組み、無所属の何人かがなびけば成立する可能性はある。 この条例案に反対する私としては、そういった緊迫した気持ちを持ち、せめて傍聴にと出かけた。

結果、公明党ははっきりと反対の立場を取り、本案は委員会で否決された。だぶん本会議には出されないで廃案になると思われる(追記: 12月2日の本会議に上程、否決)。 ただし報道などの情報によると修正したものが来年2月に再提案される公算で、せめぎあいはまだまだ続く。

委員会での議論

というわけで緊張した気持ちで出かけた私とはうらはらに、議会は丁々発止というよりはリラックスした雰囲気だった。 維新の議員提案なので、各会派からの質問に維新の議員が答えるという形なのだが、ほとんどまともに回答できす、 質問者や居並ぶ委員たちからあきれられるその姿がむしろ可哀想になるくらいだった。

文教委員会の委員長は最大会派である維新だが提案側なので、副委員長が議長を代行するが、これが共産党。 これは厳しいかと思いきや「回答者は質問の意味を理解して答えてください。」などとときおりたしなめる程度で、きびしい顔もなく 半ばあきれたように笑うしかないという様子だった。

この日の議論のひとつは条例案が法令に抵触しないかということにあった。 たとえば首長と教育委員会の権限は地方教育行政法で定められている。 条例案は首長が教育方針を決め、教育委員会、各学校長はそれに沿った目標を定め行動し、それに反すれば罷免できるとする。 このことは法令に反するとの文科省の見解が出たところ。

リラックスというよりも「しらけた」というのが正解かも。 前日の報道によれば大阪府議会で提案された条例案が法令に抵触するという文科省の判断を受けて、松井大阪府知事はその問題をクリアした修正案を来年2月の議会に提案する意向という。 堺市に提出された本条例案も今回は否決され、修正したものが来年2月に再提出される可能性が高い。 そうなるとどうせ修正されるであろう案を今日討論することに意味があるのかという点。

維新の論拠

維新も法令の範囲内でしか条例は効力を有しないという日本の法体系は理解しているらしく、 「首長が決める方針は法令に反しない範囲で」と言い逃れるのだが、 それはすなわち法令で定める首長の権限の範囲内ならばそれが遂行できなければ首長自身の責任であって、 教育委員にその責めはない。 こういった矛盾を指摘されても、まずその意味すら分からない様子で、 唯一よりどころにするのは維新が選挙で大躍進したことをもって、それを「民意」だと主張するだけである。 またそういった法律関係については詳しい弁護士などが条例案の成案に加わっているので検討済みとも。 それって、あのおバカな悪徳弁護士のことか?

レベル低すぎない?

こうして維新のレベルの低さを確認し今日はいささか拍子抜けした私である。 報道によれば橋下氏が府知事時代に提案した「職員基本条例」案についてその法律的問題点を大阪府の総務部が687項にわたって指摘し、意見交換会を行ったとか。 また「教育基本条例」案について大阪府教育委員会の委員全員が総辞職も構えて対決、意見交換や協議を行っているとのこと。 これらの意見交換に立った官僚や教育委員はさぞかし橋下氏のバカさ加減にあきれ、また討論するのもあほらしいと思いながら堪えていたのだろうと想像する。

ハシズムの危険

いくらその知的レベルが低いといっても維新の危険は軽視できない。 今日質問に立った公明党議員の言を借りれば(注1)、教育制度について私たちは過去何度も失敗をした上に立って、 現在の教育基本法第16条にある「教育は、不当な支配に服することなく 」(注2) というところに到達した。そういう反省を維新はまったく無視をしている。

(以下は私の感想)たとえば 公明党の母体である創価学会の前身となる宗教団体の創設者たちは戦時中、獄に繋がれ命も失った。 そうした思想統制のもと日本は海外に対して侵略、国内において大きな犠牲の上に戦争を遂行したのだった。 その反省に立つ教育基本法に「教育基本条例」案は真っ向から反し、特定の政治勢力による支配を「民意」と称して教育に及ぼそうとするものである。

第1次大戦後経済的に破綻し閉塞状況にあったドイツでナチス党は地方政権で、また国会で選挙により多数を占め、 その後独裁政治を作り上げていった。 あまりにもそれに似た状況をこの大阪に見るのは 私だけではないことも確認した今日一日だった。

追記

(2012年3月24日)

2012年3月23日大阪府議会本会議で、大阪府教育行政基本条例、大阪府立学校条例、大阪府職員基本条例が修正のうえ維新の会、自民、公明3会派の賛成で可決・成立した。 国の法律に抵触することを避け、教育委員会との協議や一部で議会のチェックを入れるなどの修正が施されているが、府知事の意向で教育を方向付け、抵抗する教育委員や教師を排除していくという基本は変わらない。 また府立高校の学区制を廃止し高校間で競争させ、生徒が集まらない高校は整理していくとしている。 これを受けて大阪府教育委員会の生野照子委員長は今後の運用に懸念を示し、辞意を表明していると報じられている。

同様の条例案は大阪市議会にも提出されており、継続審議となっている。 堺市議会には5月議会に提出される見込み。 自民と公明が同調しているために、これが強行される危険は極めて高い。

  1. 公明党吉川敏文議員の発言(議事録から)「私たちは歴史のさまざまな教訓の中で、今の法体系を築き上げてきたわけです。さまざまな失敗を重ねて、二度とその失敗をしないように、いろんな安全装置をつくっているわけですね。先ほど市長のリーダーシップとおっしゃいましたけれども、1人の人間にすべてが託されることほど怖いことがないという、私たちは過去の経験をいたしました。特に教育の分野ではそうであるわけで、したがって、教育委員会の独立性も法でちゃんと担保している。さらに、議会も二元代表という仕組みの中で機能していかなければならない」
  2. 2006年改正の教育基本法第16条全文「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。 」

参考リンク


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