Shino's Bar Shino-chan

ハシズムの危険

公務員の給与はなぜ高いのか

公務員の給与は民間より高い?
「国家や多くの地方自治体も民間でいえば赤字企業なのに、親方日の丸というか、そこで働く職員は安定した収入と身分保障があって、その上であぐらをかいている。」 と、思ったあなた。それは為にする宣伝に騙されています。

7 Mar 2012

公務員の給与はどうやって決まる?

そもそも公務員の給与はどうやって決まるのか。まずは民間の場合、その企業の成績が悪いからといって、簡単に給料を下げるわけにはいかないし首にもでない。 もちろん法律で安易な解雇は禁止されており、国で決められた最低賃金を下回るわけにいかない。なにより組合との交渉が必要だ。 では公務員の場合、その組合が強力かつ強欲で、赤字でもがっぽり賃金を引き出すということだろうか?

公務員にも組合があるけれども、民間で「春闘」と呼ばれるような賃金交渉スタイルは、公務員にはない。 法律で組合を作ることは認められており団体交渉もできるが(警察や消防、自衛隊を除く)、ストライキなど団体争議権が認められていないので、いちおうの交渉があってもあまり意味をなさない。 ではどうして給与を決めるかというと、人事院あるいは人事委員会というものがあって、民間の給与水準などを考慮して勧告を出し、それに基づいて政府なり地方自治体なりが議会の承認を得て決定する。 たとえば平成23年度の国家公務員給与について人事院は、「民間より0.23%高い」としてその引き下げを勧告した。

にも関わらず民主、自民、公明の3党の議員立法で平成24年度〜25年度の国家公務員給与は7.8%カットされることになった。 これは以上のしくみからすると乱暴な仕業だ。 そもそも「官民の給与格差」が話題になるのは、この賃金の決定機構に違いがある、すなわち公務員は「春闘」ができないということが前提にある。 春闘の代わりが人事院勧告だから、これを民間に例えると、春闘での労使交渉で賃金水準が決まったあとに、経営陣によって「今年は業績が悪いから」とそれよりも賃下げするというようなものだ。 こんなことを民間でやれば経営者は労働法違反で後ろに手が回る。 今回の公務員給与削減はいわば「親方日の丸」の賃下げ劇と言えよう。

なので基本的に公務員の給与が民間より高くなるはずがないし、ましてや公務員の組合の存在でそれがどうなったという問題でもない。 公務員の給与が高いとすると、その理由は2つ考えられる。 ひとつは、民間の給料はこの間下がり続けており、公務員の給与にそれが反映するのに時間的な遅れがあるということ(ただし人事院勧告に基づく給与是正は遡って行われる)。 ふたつめは、近年に非正規雇用が増えていて、民間の非正規の労働者と正規の公務員とを比べると正規の公務員はずいぶん高いということ。 しかし公務員にも非正規雇用が増えているので、そういうことでも官民の給与格差はさほど大きくないはず。

官民の低賃金競争

国家公務員給与削減の影響は、地方公務員にも及ぶ。 じつは今回の3党合意の法案が纏まるまでに揉めたことがあって、それは国家公務員だけでなく地方公務員の給与も削減するよう条文に盛り込むことを自民、公明2党が要求したからだという。 地方自治に属することを国が決めるというわけにはいかない。 それが現在の憲政の常識と私は思うのだが、自民党や公明党にはそういう憲法感覚は皆無のようだ。 けっきょく地方自治体も「自主的かつ適切に対応する」との付則が付いた。 地方公務員の給与は各自治体が自主的に決めるもので、各都道府県な人事委員会があり、またそれぞれ議会がある。 しかし国の動きに押されて地方公務員も給与カットされる可能性は強くなっている。

「公務員の給与が民間に比べて高い」と言われるのは最近のことだが、かっては「民間の給与は公務員と比較して高すぎる」と春闘で経営陣から言われた時代があった。 私には「あちらが低賃金なのだからこちらも」というのは理由にならない気がするが、今回の国家公務員の給与削減は民間の春闘にも影響を及ぼし、官民で低賃金を競うようになるだろう。 おまけに消費税増税。これが本決まりにならなくとも、警戒心から各家庭は支出を抑え、消費が落ち込むのは目に見えている。 内需がダメなら外需にと望みたいところだろうが、円高やいまの世界の経済情勢を見ていると、外需もあてにできないのはだれも分かるだろう。 国の財政にしても企業の収益にしても、目先の支出を抑えたところが、けっきょくは経営の悪化につながると思うのだが、どうだろう?

橋下の公務員バッシング

こうやって見ると橋下徹(現大阪市長)の公務員バッシングも彼の専売特許ではなさそうだ。 野田(現総理)と違って「大阪市バスの運転手の給料は 40%カットしてもよい」と言った手前、自分の市長給与をまずカットするのはえらい。 しかしこの男、4年前に大阪府知事に就任するなり府職員に対し「民間でいうと倒産企業の社員なのだから」と給料の大幅カットを実施したのは野田より先輩。 大阪市長になると「大阪市も大阪府並みに」と同様のカットを実施しようとしている。 大阪府も市も赤字には違いないのだが、それは職員の責任なのか? 歴代の首長や議会、それと政策を立案してきた高級官僚には責任があるだろう。

橋下は公務員バッシングに「民間ではあり得ない」というフレーズをよく使うが、橋下のやり方こそ「民間」では通用しない。 民間では役員報酬を削減するのは容易だが、従業員の給料をカットするのは組合の抵抗もあるし、経営陣の責任も問われることになる。 公務員は無抵抗で(抵抗するがストもできず、押し切られる)、マスコミを動員したバッシングがあって、簡単に給与カットが実施される、「民間ではあり得ない」ことが行われているのだ。 橋下は「公務員の絶対的身分保証」などと言うが、民間労働者に比べ無権利に置かれているのが公務員の実態だ。

話は少し飛ぶが、最低評価が続けば首、職務命令に3回背けば首という職員基本条例案も「民間ではあり得ない」。 「できの悪い社員を簡単に首にできるなら、どんなに楽か」と、ぼやく経営者も少なくないだろう。 解雇の条件は労働協約に記されるが、これには組合の同意が必要で、それをクリアしても労働法に反していれば労働基準監督署でハネられる。 で、どうするかというと、小泉改革で自由化された派遣労働などの非正規雇用を使う。 彼らは組合に入っていない者も多く、その身分は不安定だ。 それに比べると正規の社員や公務員は「身分保証」されてるのかもしれないが、じっさいには公務員にも非正規雇用が増えており、彼らの身分は民間の非正規社員と同じく不安定なのだ。

ついでながら、大阪市でやった思想調査(アンケート)みたいなもの。民間企業でもあっただろう。でもたいていは秘密裏に、あるいはこっそりと行われていた。 いまの時代にそんなものが公になれば、その企業はアウトでしょう。


参考リンク


Shino's Bar 店内案内