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フォントに著作権はあるか?

12 Jul 2003 加筆 (初出: 3 Jul 2003)

日経Linuxのwebページに こんな記事があった。題して 「フリーのフォントに著作権侵害の問題が見つかる」。 しかしフォントに著作権はあるのだろうか?

フォント、特に日本語フォントを開発するのはたいへんな仕事です。 一見なにげない形に見えていても、そこには開発者の工夫やセンスが含まれています。 そのため「著作権」という言葉を使いたくなりますが、 実際にフォントに著作権が認められた判例はありません。

著作物とは

著作権法 第二条 一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

最近は何でもかんでも著作物とみなす拡大解釈が横行しているが、本来 著作権法で保護される著作物の範囲は意外と狭かったのである。 クリエイティブなものなら何でも良いわけではなく、 対象分野は文芸、学術、美術、音楽の4つしかない。

1985年の著作権法改正でプログラムが著作物として認められたこと、タウンページを著作物とする判例(広告電話帳事件, タウンページデータベース事件)などは著作権法本来の趣旨を曲げたゆゆしきことだと私は思う。

デザインに著作権は無い

「デザインには著作権は認められない。」 と聞くと「え?」と思うかもしれませんが、 工業デザインは「著作物」ではなく「意匠」として意匠法で保護されることになっています。 Tシャツのデザインや広告ポスター、フォントでも飾りフォントはどうなるかなど微妙なものもありますが、 一般に実用品については著作権法ではなく意匠法で扱うのが相当とされています。

フォントは意匠なのか?

フォントが著作権法で保護されないのは それが実用品であることの他に、もし著作権を認めてしまうとそれを手本に改良することが困難になるなどの弊害があるためと思われます。 実用品ということでは著作物よりも意匠に近いのですが、これも難しいでしょう。 意匠では類似意匠にも権利が及びます。実用性を重んじたフォントでは従来のものと類似しないものを作るのは困難なので、新たなフォントに意匠権を認められる可能性は少ないし、もし認められると社会的な弊害が生ずると考えられるからです。

では何で保護されるのか?

ではフォントはコピーし放題なのかというとそういうわけにはいきません。 冒頭述べたようにフォントを開発するのはたいへんな仕事で、それを売買する商習慣も存在します。 判例では不正競争防止法が適用された例があります。 これはいわゆる海賊コピー販売を禁じたもので、著作権法や意匠法などで保護できない場合の救済を目的に1993年に制定されました。ただしオリジナル発売後3年経過するとこの条項による保護はなくなります。

冒頭記事のフォントの無断複製が行われたとされるのは10数年前のことでもちろん不正競争防止法 (の当該条項) は当時存在しません。() 法的に可能なのはフォントの販売時に無断複製を禁止する条件を付けてあったとすれば、その違約行為により損害賠償を求めることぐらい。 しかしながら不正コピーを知らない第3者にまで請求は及ぶことはないでしょう。

著作権を持ち出す不勉強

今回の事件は法的よりも信義あるいはフリーフォント作成の理想とモラルの問題と言えます。 タイトルに「著作権侵害」を掲げた日経Linuxの冒頭記事はセンセーショナルに過ぎる扱いが不快なだけでなく、記者の不勉強を露呈したものだと思う。 いっぽう、問題のフォントを由来としないフリーフォント開発の動きには敬意を表すものです。

不正競争防止法についての加筆 (12 Jul 2003)

狩野さんの「作業メモとか考えた事とか 」(2003年7月10日)で本文書にあった「不競争防止法」は「不正競争防止法」の誤りであるとの指摘がありましたので訂正させていただきました。 また不正競争防止法は昭和九年より存在しているとの指摘も同時にいただきました。 現行の不正競争防止法はこの昭和9年来のものを平成5年(1993年)に全面改正されたものです。 無断複製の行為があったとされる時期の旧法がどうなっていたかを調べるべきなのですが、 本文書全体の趣旨に大きな影響はないと思います。 「現行不正競争防止法の当該条項は当時存在しない」と読み替えてください。

参考リンク

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