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ハシズムの危険

ホリエモンも歓迎するベーシックインカムの誤解

橋下徹の政治手法を「独裁」と呼ぶのは止めよう。それは「恐怖政治」と呼んでよい。

1 Apr 2012

橋下徹が共産主義者になった?

エイプリルフールの話題のつもりではないです。 先日、ある大阪のテレビ局で、大阪維新の会がまとめた国政へ向けての政策骨子『維新八策』のうち社会保険政策について解説するというご丁寧な番組を放送していた。その中で「ベーシックインカム」について、スタジオのコメンテーターたちは「それはいいかもしれないが、財源はどうする?」程度の話で終わっていた。 このカタカナにたぶん馴染みがないと思われるので、ここで話題にしたい。

「ベーシックインカム」というのは、貧乏人も金持ちも、働くものも働かないものも、最低生活の保障として国民一律に一定額を支給しようというもの。 突拍子もないと感じられるかもしれないが、そのミニチュア版の例はある。 2008年に麻生内閣が「定額給付金」というものを配ったことがある。あれの金額を大きく、恒常的に実施するものだとイメージすることができる。 また民主党政権の「子供手当て」というものも初年度のものには所得制限がなく、「ベーシックインカム」と思想的に近いものだった。

「誤解をしちゃいけないのは、ある一定のラインまで(給付額まで)は超共産主義的制度だが、それを超えると自由主義が徹底されるという価値観。」 「共産主義と自由主義のミックス型」 (2012年2月15日 橋下徹のツイッターから)

橋下の上の発言が具体的にどのシステムを念頭に置いているか定かでないが、 国民全員に無条件で一律の給付を指して共産主義的と呼んでいるのか。 誤解をしちゃいけないのは、この制度はじつはハナからの弱肉強食、自由主義だということ。

どのくらい貰える?

最初に「定額給付金」とか「子供手当て」を例に出したのは却ってイメージを貧しくさせたかもしれない。 橋下の言うものはそんなチンケなものではない。

「ベーシックインカムが成立すれば(これは不可能な政策と言われています)、年金制度、生活保護制度、失業保険制などを失くす可能性を考えることができる。それにまつわる組織が不要になるのです。」 「また家計を助ける色々な助成制度(家賃補助、保育料補助、幼稚園料補助、医療費助成、就学援助、私学助成、塾代助成、子ども手当その他諸々)がありますが、それも一本化できる可能性が出てくる。」 (2012年2月15日 橋下徹のツイッターから)

既存の社会保障制度のいっさいがっさいをこの「ベーシックインカム」で取って代えようとするものだ。 要するに、飢え死にしない程度のお金をあげましょう。少しまともな生活をしたいならば働きなさい。 でも働かずして貧しい生活で我慢するのも自由ということ。 また、職を失っても飢え死にすることはないだろう。劣悪な条件では働かないという自由もあるので、解雇条件や最低賃金、長時間労働の禁止などもろもろの労働者を保護する制度は必要ない。 経営者の側からすると、保険金負担が要らない、気楽に首が切れる、しかも都合のよい条件で従業員を雇いやすい。 ホリエモンが歓迎する理由となっている。

企業にとってみれば、有能な人間だけを継続してやとって、誰にでもできる仕事は出来るだけ安い労働者に任せたいと思うだろう。だから、海外にどんどん進出して安い労働力を求める。リストラしやすい、派遣労働者を安く雇おうとする。が、ベーシックインカムがあれば、無理をすることは無い。ある程度のセーフティネットが確保されるからだ。 (2008年12月15日 堀江貴文のブログ『六本木で働いていた元社長のアメブロ』)

「ベーシックインカム」で満足してしまい、みんな働かなくなると困るので、飢えの恐怖でもって働かせるという自由主義、いや資本主義の原則が冒されない程度の金額に一律支給が抑えられるのはいうまでもない。

だれが得をする?

まず貧乏人は確実にいまより悪くなる。中間層も賃金が下がり、増税に苦しむだろう。 上の賛成論からすると簡単に首切りされる代わり、雇用も増え、失業率の数字は下がりそうだ。もちろん低賃金でという条件が付く。 しかし私の読みでは失業は増える。 というのは、経営者にとっていくら低賃金で雇えるからといって、不要な人員を雇う必要はないからだ。 国民が全体に貧しくなると、消費は落ち込む。そんな環境で投資する馬鹿はいない。 需要を求めて、やはり海外に行くだろう。

中小の経営者にとってはどうだろう。 景気が良ければ大きな負担なく従業員を雇え、苦しくなれば辞めてもらえばよい。 すごく魅力的に見えるが、それは絵に描いた餅。 上述の理由で国内の景気は悪くなる。おまけに増税。たとえ赤字でも消費税は納めなきゃならない。 海外で儲ける大企業の下請けに期待するか、自分自身が海外に出ていくしかない。 なんのことか、現在と同じか悪くなる。

では、海外展開する大企業の一人勝ちなのか。 どうだろう、投資した先がいつも好況とは限らない。ならば次を探す。 いつも大博打の連続……そのことは変わらないのかもしれない。 「グローバリズム」という名の、内需を潰す亡国の経済政策の下では、それは避けられない。 ただ、その浮き沈みを労働者や下請けを犠牲に切り抜けるということは現在より楽になるだろう。

病気になったらどうする?

病気などの障害があって働けない人はどうする? 支給された金で医療保険に入っておけということなのか。 橋下の好きな自由主義と競争(「弱肉強食」のほうが適切な表現)は医療や教育にも及ぶ。 支給された金で病院に行こうが行くまいが、子供の教育につぎ込もうがつぎ込まないかも自由。親に金を渡しているのだから私学助成金など必要ない。 また余裕があれば、コンサートに行こうがパチンコに行こうがそれも自由。だから交響楽団に助成金は必要ない。 一律支給なので行政判断が要らない。あまたの社会保障制度、助成制度の手間が省けて効率的というのがこの話を魅力的に見せている。

ところで自由主義の先輩、たとえば英国では医療や教育は基本的に無料。 そういうハンディキャップを除いたうえでの競争というのが基本思想にある。 文化も社会教育の一貫と考えられているから、図書館も美術館も無料なのだ。 橋下の口車にかかると、公正な競争の条件が「既得権益」などとあたかも不公正で、 逆に強気を助け弱気を挫く橋下が公正を主張しているように錯覚することがある。 彼の言動の本質はその真逆にあると考えたほうが、たいてい当たっている。

この続きは『究極の平等、公平税制?フラットタックス 』(当サイト内)をお読みください。

参考リンク


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