「原子力は夢のエネルギー」
そう、そしてそれは悪夢だった……。
2011年5月6日、菅首相は中部電力に対し浜岡原発の停止を要請した。 その唐突さに反発はあったものの、「無理して止めなくても大丈夫ですよ」などと言えるわけもない。 誰も正面切って反対もできず、けっきょく中部電力はこれを受け入れ浜岡原発の全号機を停止した。
中部電力は5月23日、この夏の電力需給の見通しを示した。 (中部電力「浜岡原子力発電所の運転停止に伴う今夏の需給対策の状況について」) 休止する予定だった火力発電所の戦列復帰などで、なんとかこの夏の電力需要ピークは切り抜けられそうだ。 ただし通常8~10%程度を確保すべき供給予備率は5%に落ち込み、綱渡りの状況。 また中部電力から東北電力、東京電力へ電力融通する余裕はない。まあ不安は残るもののひと安堵といったところか。
ところが、中部電力が発表したこの数字を見ていて不思議なことに気がついた。
ここで中部電力が経済産業大臣に今年3月23日に届出た供給計画を見てみよう。
(中部電力「平成23年度電力供給計画」)
左の表から今年H23を見ると需要のピークは2,560万kWを予想し、供給力は2,999万kWで、供給予備率は 17.1%。 右の図の電源設備構成比でH23の原子力への依存度は 12%。これは浜岡原発の3-5号機の定格出力の和 362万kWを全供給力 2,999万kWで割ると出る数字 12.1%で、合っている。 ここで原発をあてにしていた供給予備率から原発分を引くと、 17.1% - 12.1% = 5%となる。 もちろん 5%が安心できる数字ではないのだが、 これは何もしないで出る数字なので、5月23日につらつら述べられた供給確保の方策とはいったい何なのか?
5月23日のプレスリリース(前出)には次のような(これを作られた方には申し訳ないが)分かったような分からないような図が付いている。 浜岡原発停止に伴う需給バランスの検討過程を順を追って示そうとしたものらしい。

なんとかこれを好意的に読み取ると、たぶんこういうことを言いたいようだ…。
2番目の 527万kW減というのはどういう数字だろう。 浜岡原発全号機の能力はさきに出た 362万kWで、これを停止したときの供給能力は 3,101万kw - 362万kW = 2,739万kW。昨年並み猛暑を想定した最大需要 2,709万kWを1%上回る。 527万kWに含まれる東京電力へ融通予定の電力だが、同資料でも5月6日の資料でも最大75万kWとなっているので、 527万kW - 362万kW - 75万kW = 90万kW が行方不明になっている。 最後の結論が「あと 85万k欲しい」という話になっているので、90万kWの行方不明というのは「その他省略」で済まない気がするのだが……。
そもそも想定最大需要が3月23日提出のもので 2,621万kWだったものが5月9日には 2,637万kWと微妙に増えているなど、これら基礎数字からしてなんか怪しい。
大事なことを見落としていた。 自民党衆議院議員 河野太郎氏のブログが指摘している揚水発電の存在。 同ブログを見ると、中部電力は 336万kWの揚水発電設備を持っているが、これは上記の中部電力の供給計画では無視されている。 揚水発電は関西電力関連の記事で説明したように、コスト面からはできるだけ使いたくないもので、上記計画では外されていたものだろう。 この揚水発電を加えると、中部電力の供給能力は浜岡原発なしで 3.199万kWとなり、需要を 2,637万kWと想定すると予備率 21%と、余りあることになる。