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「原子力は夢のエネルギー」

原発ゼロのコスト

5 Sep 2012

「原子力は夢のエネルギー」
そう、そしてそれは悪夢だった……。

「原発ゼロで電気代は2倍」

政府の検討によれば、原発をゼロにすると電気代は2倍になるそうだ。 しかし、考えても見よう。 フクシマ事故前の2010年の全電力使用量中、原子力の占める割合はおよそ30%だった。 この30%をLNGあるいは石炭に代えたとして、どうすれば総費用が2倍になるのか。

原発推進派、あるいは最後の抵抗勢力のデマゴギーに付き合うのもうんざりするが、 これを何の批判もなく垂れ流す大手マスメディアにも困ったものだ (2012月9月3日 産経 など)。 大手マスメディアは何の説明も付けないので、ここで解説する必要がある。

燃料費の高騰

右の図はフクシマ事故以前に関西電力が示していた発電コストの比較。 「原子力は安い」という神話があったころでさえ、原子力とLNG火力や石炭火力はほぼ互角だった。 いまでは、原子力のコストは実を言うと高いことがバレているので、これを火力に置き換えたとて、総費用はむしろ下がるはずだ。 (石油は価格が不安定で、しかも高い目なので、最近の火力発電では主力ではない。)

原子力のコスト内訳の中で燃料費の占める割合は少なく、設備償却などの比重が大きい。 いまある原発を遊ばせるコストを覚悟し、そこに 30%分の火力の燃料費が上乗せされると考えても、コストアップは30%程度にしかならないはずだ。 ところがフクシマ以降、全国の原発が停止し、急遽LNGの買い付けに走らねばならない状況。その足元を見られてか、LNGの購入価格は相場の数倍となっている。 これが短期的に発電コストを大きく押し上げている理由となっている。

しかし米国を中心にシェール・ガスと呼ばれる採掘の新工法が開発され、長期的にはLNGの価格は安定あるいは低下が見込まれる。 またLNG、石炭とも火力発電の効率向上による燃料節約も今後期待される。 これらの理由から、長期的には燃料費の不安はない。

高コストの要因

では、どうすれば「原発をゼロにすると電気代は2倍」という論拠が作れるのか。 デマゴーグの拠り所はここにしかない。 原発に代わる、高コストなものを持ち出すこと。 原子力が高コストであることはすでにバレているから、それに代わるものは「超」高コストでなければならない。 それが太陽光発電だ。

太陽光発電は「超」高コストなうえに、発電はお天気まかせという不安定な電源だから、欠陥だらけの原発の対抗馬、あるいは新電源の当て馬としては最適なのだ。 「風まかせ」の風力発電も似たり寄ったり。 (右図は少々古くて恐縮だが、2010年のエネルギー白書のもの)

原発の退場で抜けた穴を太陽光発電(や風力)で埋めるというストーリーで、「電気代は2倍」と主張するのだ。 もちろんこれは子供じみたデマだ。

2011年、2012年の夏、原発の退場で抜けた部分のほとんどは既存の火力で補えたのだ。 もちろん燃料費のアップを犠牲にして。 そこに一時的な燃料の高騰があった。 それでもコストアップは2倍というような数字ではなかった。長期的にはもっと小さなものになるはずだ。

原子力の比重

以上の議論は、フクシマ事故以前の2010年と、近い将来の原発ゼロの日本とを比較している。 しかしフクシマ以前と以降とを同じように論じることは難しくなっている。 まずは原発の「安全神話」が崩れたのと同じように、原子力のコスト神話も崩れているということがある。 いままで騙していたコスト計算の虚構が崩れたことに加え、事故の補償や安全対策など現実にコストアップが生じている。 また使用済核燃料をどうするのか。

フクシマ以前の2010年の電源における原子力の比重は30%だった。 しかし政府の試算によると、40年以上の原発は停止、代わる新設は無いとすると、2030年には15%程度になるという。 その程度ならば原発代替の電源を考えるよりも、節電を考えたほうがよい。 ならば電気代は上がることはない。

私の試算は少し違う。2010年に日本にあった原発は54基。ただし柏崎刈羽のうち3基は使えなかったから 51基だった。 2011年フクシマ第1の4基は爆発していて、廃炉が決定している。 ほかの2基も、あるいは福島第2の4基も復帰は難しいだろう。浜岡の3基や女川の3基など、怪しいものも数多い。 そうして数えていくと、いま生きている原発は40基にも満たない。 政府は安全が確認されたものから再稼働する構えだが、ストレステストの進捗状況を見ていると、 一次評価が出ている原発は2012年9月3日現在で 30基。 残りが順次出てくるかというと、出てこないと思う。 たぶん大幅な補強工事などをしない限り安全とするデータが出せないのだろう。

つまりフクシマ以前の2010年に比べ、フクシマ以降に使える原発は6割に減っている。 なので今後の老朽化による退役を待たずとも、いま頑張っても原発依存度は20%以下となる。依存度とは別の数字の設備能力(ピーク時の電力需給に関わる)でいうと現在は10%を少し超える程度ではないか。 その程度なら節電によってカバーでき、2030年を待たずとも、いますぐ原発に総退場願っても問題はないことが、今夏2012年の経験ではなかったか。

いずれに転んでも、たかだか10%-20%の比重でしかない原発。これを残すかどうかで 「ゼロは非現実的」だとか「日本経済がやっていけるのか」などと大げさに叫ぶことにどういう意図があるのか、我々は疑わなければならない。


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